DATA COLUMN — 07
POST POSITION STUDY
外枠有利は本当だった。
ただし川崎だけが、逆を向く
地方競馬のダートは外枠が有利——馬券を買っている人なら、たいてい知っている話です。 内ラチ沿いは砂が深く荒れやすく、砂を被る不利もある。ではそれは、どのコースでどれだけ効いているのか。 14場・54コース、114,154レースを数えました。結果は通説どおり、36コースで外枠有利。 ただし生の複勝率(内枠29.7%・外枠30.0%)を見るだけでは、その有利さは数字から消えてしまいます。 そして川崎は、全5距離が逆を向いていました。
検証ルール
- 対象: 地方競馬14場・54コース(競馬場×馬場種別×距離で1コース)の全レース
- 枠グループは内枠=1〜3枠 / 中枠=4〜6枠 / 外枠=7〜8枠。馬番ではなく枠番で集計
- 評価指標は複勝率(3着内率)と、その期待値との差。期待値は各出走の min(3, 頭数) ÷ 頭数 を積み上げたもので、 「馬の力に差がなくランダムに決まるなら3着内に入る確率」を意味する
- 名古屋は2022年4月の弥富移転以降に限定(旧・土古とはコース形状が別物のため)
- 数値は集計期間の実績であり、将来の傾向を保証するものではありません
生の複勝率では、外枠有利が消えてしまう
知られている傾向なのだから数字にも出ているはず——と思って複勝率を並べると、肩透かしを食らいます。 内枠29.7%に対して外枠30.0%。ほとんど差がありません。 理由は単純で、内枠と外枠では、そもそも出走しているレースの頭数が違うからです。
8頭立てのレースでは1〜3枠は必ず存在しますが、7〜8枠は存在しないことがあります。逆に14頭立てなら全ての枠が揃う。 つまり内枠は少頭数レースを多く含み、外枠は多頭数レースにしか現れません。 少頭数レースは3着内に入れる確率がそもそも高い(8頭立てなら37.5%、14頭立てなら21.4%)ので、 内枠のほうが数字が良く出るのは当然なのです。
そこで各出走行について「ランダムなら3着内に入る確率」を計算し、実績との差をとりました。これが下の表の「期待値との差」です。
対象: 14場 / 54コース / 114,154レース / 1,154,318出走
| 枠グループ | 出走 | 勝率 | 複勝率 | 期待複勝率 | 期待値との差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 内枠(1〜3枠) | 347,846 | 9.6% | 29.7% | 30.2% | -0.5pt |
| 中枠(4〜6枠) | 427,811 | 9.7% | 29.4% | 29.1% | +0.2pt |
| 外枠(7〜8枠) | 378,661 | 10.3% | 30.0% | 28.6% | +1.4pt |
複勝率 = 3着内率。期待複勝率 = そのグループが走ったレースの頭数から決まる「ランダムなら3着内に入る確率」。差がプラスなら期待より走れている枠。
期待複勝率の列を見てください。内枠30.2%に対して外枠28.6%—— 外枠はもともと1.6pt不利な条件で走っています。その条件差を差し引くと、 外枠は期待を+1.4pt上回り、内枠は−0.5pt下回る。 通説どおりの外枠有利が、ここでようやく数字として立ち上がります。
つまり生の複勝率は、外枠有利を打ち消す方向に歪んでいるわけです。 補正なしの枠順データを載せているサイトを見て「地方競馬の枠順はあまり関係ない」と感じたことがあるなら、 それは傾向が無いのではなく、物差しのほうが傾向を隠していた可能性があります。 なお勝率だけは内枠9.6%・外枠10.3%と、補正するまでもなく外が上でした。
54コースの枠順ランキング
「内枠の期待値との差」から「外枠の期待値との差」を引いた値で並べました。 マイナスが大きいほど外枠有利、プラスが大きいほど内枠有利です。
外枠が有利な(差がマイナスの)コース: 36 / 54
| 順位 | コース | 平均頭数 | 内枠 | 外枠 | 内−外 | レース |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 名古屋 ダート920m | 10.8 | -6.8 | +7.2 | -14.0 | 505 |
| 2 | 園田 ダート820m | 10.2 | -4.4 | +6.4 | -10.8 | 986 |
| 3 | 名古屋 ダート1400m | 11.1 | -5.1 | +3.6 | -8.7 | 497 |
| 4 | 船橋 ダート1000m | 9.9 | -4.0 | +4.4 | -8.4 | 532 |
| 5 | 笠松 ダート800m | 7.8 | -2.1 | +6.3 | -8.4 | 380 |
| 6 | 門別 ダート1200m | 9.8 | -3.8 | +3.7 | -7.5 | 3,485 |
| 7 | 船橋 ダート1200m | 10.5 | -3.7 | +3.3 | -7.0 | 2,995 |
| 8 | 船橋 ダート1500m | 10.4 | -3.3 | +3.2 | -6.5 | 1,471 |
| 9 | 名古屋 ダート1500m | 11.1 | -3.3 | +3.2 | -6.5 | 3,966 |
| 10 | 姫路 ダート1400m | 10.1 | -2.7 | +3.2 | -5.9 | 1,408 |
| 11 | 盛岡 ダート1400m | 9.2 | -2.5 | +3.0 | -5.5 | 2,066 |
| 12 | 笠松 ダート1600m | 8.6 | -2.2 | +3.2 | -5.4 | 1,569 |
| 13 | 船橋 ダート1600m | 11.2 | -3.0 | +2.2 | -5.2 | 1,196 |
| 14 | 笠松 ダート1400m | 8.5 | -2.3 | +2.8 | -5.1 | 6,894 |
| 15 | 名古屋 ダート1700m | 10.7 | -3.2 | +1.8 | -5.0 | 799 |
| 16 | 佐賀 ダート1300m | 9.8 | -1.9 | +2.8 | -4.7 | 3,590 |
| 17 | 佐賀 ダート900m | 9.7 | -1.6 | +3.0 | -4.6 | 689 |
| 18 | 水沢 ダート850m | 8.9 | -1.2 | +3.0 | -4.2 | 929 |
| 19 | 門別 ダート1800m | 9.3 | -1.4 | +2.3 | -3.7 | 431 |
| 20 | 門別 ダート1000m | 9.8 | -1.2 | +2.1 | -3.3 | 2,936 |
| 21 | 門別 ダート1100m | 9.4 | +0.8 | +3.5 | -2.7 | 332 |
| 22 | 門別 ダート1700m | 9.1 | -0.4 | +2.1 | -2.5 | 1,094 |
| 23 | 佐賀 ダート1400m | 10.0 | -1.0 | +1.5 | -2.5 | 6,423 |
| 24 | 金沢 ダート1500m | 8.9 | -0.7 | +1.6 | -2.3 | 4,213 |
| 25 | 園田 ダート1400m | 9.9 | -0.6 | +1.5 | -2.1 | 11,375 |
| 26 | 浦和 ダート800m | 10.1 | +0.0 | +2.1 | -2.1 | 774 |
| 27 | 高知 ダート1300m | 10.1 | -0.1 | +1.8 | -1.9 | 4,702 |
| 28 | 佐賀 ダート1800m | 9.9 | +0.0 | +1.8 | -1.8 | 405 |
| 29 | 盛岡 ダート1600m | 9.8 | -0.3 | +1.2 | -1.5 | 1,444 |
| 30 | 高知 ダート1400m | 10.1 | +0.4 | +1.8 | -1.4 | 4,845 |
| 31 | 盛岡 ダート1200m | 9.2 | +0.1 | +1.3 | -1.2 | 2,087 |
| 32 | 園田 ダート1230m | 10.3 | +0.2 | +1.0 | -0.8 | 1,965 |
| 33 | 大井 ダート1800m | 12.4 | +0.3 | +0.8 | -0.5 | 593 |
| 34 | 浦和 ダート1400m | 10.9 | +0.0 | +0.5 | -0.5 | 3,329 |
| 35 | 佐賀 ダート1750m | 10.1 | +0.5 | +0.8 | -0.3 | 553 |
| 36 | 金沢 ダート1400m | 8.8 | +0.4 | +0.6 | -0.2 | 4,190 |
| 37 | 浦和 ダート2000m | 11.1 | +0.8 | +0.6 | +0.2 | 357 |
| 38 | 水沢 ダート1400m | 9.8 | +0.8 | +0.3 | +0.5 | 2,428 |
| 39 | 水沢 ダート1300m | 8.9 | +1.6 | +0.2 | +1.4 | 1,784 |
| 40 | 大井 ダート1200m | 13.0 | +1.2 | -0.2 | +1.4 | 4,315 |
| 41 | 川崎 ダート2000m | 11.3 | +1.6 | +0.1 | +1.5 | 379 |
| 42 | 大井 ダート1600m | 12.1 | +1.6 | -0.6 | +2.2 | 3,311 |
| 43 | 大井 ダート1400m | 12.2 | +1.8 | -0.5 | +2.3 | 2,109 |
| 44 | 園田 ダート1870m | 9.3 | +1.4 | -0.9 | +2.3 | 522 |
| 45 | 川崎 ダート900m | 10.5 | +2.6 | +0.0 | +2.6 | 1,289 |
| 46 | 金沢 ダート1700m | 8.8 | +1.8 | -1.0 | +2.8 | 435 |
| 47 | 高知 ダート1600m | 9.1 | +2.1 | -0.8 | +2.9 | 1,414 |
| 48 | 川崎 ダート1600m | 11.7 | +2.4 | -0.8 | +3.2 | 855 |
| 49 | 浦和 ダート1500m | 10.9 | +2.2 | -1.4 | +3.6 | 1,630 |
| 50 | 園田 ダート1700m | 9.8 | +1.6 | -2.1 | +3.7 | 984 |
| 51 | 川崎 ダート1400m | 10.4 | +2.7 | -1.4 | +4.1 | 2,782 |
| 52 | 水沢 ダート1600m | 10.0 | +2.2 | -2.1 | +4.3 | 1,350 |
| 53 | 川崎 ダート1500m | 11.8 | +3.3 | -1.7 | +5.0 | 1,863 |
| 54 | 盛岡 ダート1000m | 9.2 | +4.9 | -1.7 | +6.6 | 699 |
数値は期待値との差(pt)。「内−外」がマイナスなら外枠のほうが期待を上回っている。上位5コース(外枠有利)を橙、下位5コース(内枠有利)を緑で表示。
最も外枠が効くのは名古屋920mの−14.0pt。内枠が期待を6.8pt下回る一方、外枠は7.2pt上回っています。 園田820m(−10.8pt)、名古屋1400m(−8.7pt)、船橋1000m(−8.4pt)と続き、上位は短距離戦が目立ちます。
通説から外れて内枠側に回るのは18コースで、最大は盛岡1000mの+6.6pt、次いで川崎1500m(+5.0pt)です。 ただし内枠有利側の数字は、外枠有利側にくらべて絶対値が小さい。 「外枠が効くときは大きく効き、内枠が効くときは小さく効く」——これが54コースを並べて見える非対称です。 例外はあっても、外枠有利という土台そのものは揺らぎません。
距離が短いほど、外が効く
ランキング上位に短距離が並んだのは偶然ではありません。距離帯で切ると、きれいな階段になります。
| 距離帯 | コース数 | 内−外の中央値 | 外枠有利のコース | 先行有利度の中央値 |
|---|---|---|---|---|
| 1100m未満 | 10 | -4.4 | 8/10 | +46.5 |
| 1100〜1399m | 9 | -1.9 | 7/9 | +36.6 |
| 1400〜1699m | 24 | -1.4 | 15/24 | +31.8 |
| 1700m以上 | 11 | -0.3 | 6/11 | +27.1 |
先行有利度 = 逃げ・先行だった馬が3着内を占めた割合と、その期待値との差(pt)。大きいほど前に行った馬が止まらない。
1100m未満では中央値−4.4pt(10コース中8コースが外枠有利)ですが、1700m以上では−0.3pt(11コース中6コース)まで薄まります。 同じ表の右端にある「先行有利度」も、短距離ほど大きい。短距離は前に行った馬が止まらず、 その先行争いで外枠のほうが被されずに出て行きやすい——という説明が、数字の並びとは整合します (ただし本コラムで検証したのは相関までで、因果を示したものではありません)。
実務的な含意はシンプルです。短距離戦で「内枠だから」という理由だけで買うのは、地方競馬では分が悪い。 逆に長距離戦では枠順そのものの影響が小さくなるので、脚質や血統など別の材料を優先したほうが合理的です。
ただひとつ、川崎だけが逆を向く
場ごとにコースの中央値をとると、外枠有利が6場、ほぼ互角が7場。 そして14場でただ1場、川崎だけが「内枠有利」に振れます。
| 競馬場 | コース数 | 平均頭数 | 内−外の中央値 | 傾向 |
|---|---|---|---|---|
| 名古屋 | 4 | 10.9 | -7.6 | 外枠有利 |
| 船橋 | 4 | 10.5 | -6.8 | 外枠有利 |
| 姫路 | 1 | 10.1 | -5.9 | 外枠有利 |
| 笠松 | 3 | 8.3 | -5.4 | 外枠有利 |
| 門別 | 5 | 9.5 | -3.3 | 外枠有利 |
| 佐賀 | 5 | 9.9 | -2.5 | 外枠有利 |
| 高知 | 3 | 9.8 | -1.4 | ほぼ互角 |
| 盛岡 | 4 | 9.3 | -1.4 | ほぼ互角 |
| 園田 | 5 | 9.9 | -0.8 | ほぼ互角 |
| 金沢 | 3 | 8.8 | -0.2 | ほぼ互角 |
| 浦和 | 4 | 10.8 | -0.1 | ほぼ互角 |
| 水沢 | 4 | 9.4 | +0.9 | ほぼ互角 |
| 大井 | 4 | 12.4 | +1.8 | ほぼ互角 |
| 川崎 | 5 | 11.1 | +3.2 | 内枠有利 |
場ごとに複数コースの中央値をとったもの。同じ場でも距離によって向きが変わるため、実際に買う前はコース単位で確認すること。
川崎が特別なのは、中央値だけの話ではありません。900m・1400m・1500m・1600m・2000mの全5距離が、 例外なく内枠寄り(+1.5〜+5.0pt)でした。距離によって向きが変わる他場とは明らかに性格が違います。 大井も4距離のうち3つが内枠寄りで、通説から外れる側に立っています。
共通しているのは頭数の多さで、大井12.4頭が14場で最多、川崎11.1頭がそれに次ぎます。 外枠有利の筆頭である名古屋(10.9頭)・船橋(10.5頭)を上回る水準です。 多頭数のレースが標準になっている大きめのコースでは、内で包まれる不利より外を回らされる距離ロスのほうが重くなる—— と読める並びですが、コース形状や砂の管理といった要因と切り分けられてはいません。 南関の2場を買うときは、外枠有利という一般則をそのまま持ち込まないほうがいい、というのが実務的な結論です。
注意したいのは、同じ競馬場でも距離によって向きが変わることです。 園田は場としてはほぼ互角(中央値−0.8pt)ですが、820mだけを見れば−10.8ptで全54コース中2位の外枠有利。 買う前に場ではなくコース単位で確認してください。各コースの詳細は 地方競馬コース別データ一覧から辿れます。
まとめ
- 外枠有利という通説は、数字でも裏づけられた。54コース中36コースで外枠が期待を上回り、全体では外枠+1.4pt・内枠−0.5pt。
- ただし生の複勝率では見えない(内枠29.7%・外枠30.0%)。内枠は少頭数レースを多く含むぶん条件が甘く、有利さを打ち消してしまう。
- 距離が短いほど外枠有利が強まる(1100m未満で中央値−4.4pt、1700m以上で−0.3pt)。
- 14場でただ1場、川崎だけが内枠有利。全5距離が例外なく内枠寄りで、大井も4距離中3つが同じ側。
- 外枠が効くときは大きく、内枠が効くときは小さい。最大は名古屋920mの−14.0pt、内枠側の最大は盛岡1000mの+6.6pt。
馬券の購入は20歳以上・余裕資金の範囲で。データは判断材料としてご活用ください。
枠が分かったら、次はコースの中身。
脚質・枠順・血統・馬場状態を、地方競馬14場54コースぶん公開しています。買う場所が決まったら投票環境の準備もどうぞ。