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DATA COLUMN — 08

KEIRIN BANK STUDY 効いていたのはカント角ではなく、
直線の長さだった

競輪41場・男子74,920レースの決まり手を、バンクの形と突き合わせました。 「333バンクは先行有利、500バンクは差し有利」——これはデータでもそのとおりです。 ただし周長・カント角・見なし直線は互いに絡んでいるため、そのままでは何が効いているのか分かりません。 周長を400mに固定して比べ直すと、効きが残るのは直線のほうで、カント角の効果はほぼ消えました

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検証ルール

  • 対象: 全41場の男子競走74,920レース(2023年7月9日〜2026年7月5日)。ガールズケイリンは別集計のため除外
  • 決まり手は1着のもの(逃げ・捲り・差しの3分類)。場ごとの率を単純平均している
  • バンクの周長・カント角・見なし直線は各場の公表値
  • 関係の強さはピアソンの相関係数で見る。±1に近いほど強い関係、0に近ければ関係が見えない
  • 数値は集計期間の実績であり、将来の傾向を保証するものではありません
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周長で、決まり手はここまで変わる

まず通説どおりの絵から。周長が短いほど逃げが決まり、長いほど差しが決まります。 きれいに単調で、例外はありません。

対象: 41場 / 男子 74,920レース

周長場数逃げ捲り差しスジ決着万車券
333m級730.2%30.6%39.2%58.5%26.6%
400m3124.0%27.7%48.4%56.6%28.1%
500m321.8%24.1%54.1%55.8%29.4%

決まり手は1着のもの。333m級は333m(6場)と335m(前橋・1場)をまとめた帯。各場の平均を単純平均している。

333m級(7場)の逃げ30.2%に対し、500m(3場)は21.8%。逆に差しは39.2%から54.1%へ跳ね上がります。 差しに至っては14.9ポイントの開きで、同じ「番手の選手を買う」でも成功率がまるで違うことになります。 万車券率も26.6%→29.4%と、差しが決まる場ほど荒れる方向に動いています。

ここまでは競輪ファンなら知っている話です。問題はこの先で、 周長が短いバンクは、カント角が急で、直線も短い——3つの要素が同時に動いています。 実際、周長とカント角の相関は−0.76、周長と見なし直線は+0.65。 つまり上の表だけでは「周長が効いた」のか「直線が効いた」のか「カントが効いた」のか区別できません。

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周長をそろえて、直線だけを動かす

切り分け方は単純です。最多の400mバンク31場だけを取り出し、見なし直線の長さで3つに分ける。 周長は全部400mで固定されているので、ここで差が出れば周長のせいではありません。

400mバンク 31場だけを、見なし直線で3分割

見なし直線場数逃げ捲り差しスジ決着万車券
52m未満625.6%27.8%46.6%56.8%27.9%
52〜58m1024.4%28.0%47.6%57.2%27.3%
58m以上1523.0%27.4%49.6%56.1%28.6%

周長を400mに固定しているので、ここでの差は周長由来ではない。

差は小さくなりますが、向きは変わりません。直線52m未満の逃げ25.6%に対して58m以上は23.0%、 差しは46.6%から49.6%へ。周長を固定してもなお、直線が長いほど逃げが残らず、差しが決まるという関係が生きています。

直線が長ければ、最終コーナーを回ってからの追い比べの距離が伸びます。 先行した選手にとっては粘りきる区間が長くなり、後ろの選手にとっては差し切る余地が増える—— と読める並びですが、本コラムで示せたのは関係の強さまでで、因果を証明したわけではありません。

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カント角は、周長の影に隠れていた

同じ手続きをカント角にも適用すると、結果が大きく変わります。 全41場では効いているように見えたカント角が、周長をそろえた途端に消えるのです。

バンクの要素全41場
逃げとの相関
全41場
差しとの相関
400m限定
逃げとの相関
400m限定
差しとの相関
見なし直線-0.75+0.76-0.59+0.50
カント角+0.28-0.44-0.27+0.10
周長-0.64+0.76

ピアソンの相関係数。±1に近いほど関係が強い。400m限定の列は周長を固定した比較で、「—」は周長が一定のため計算できないことを示す。

全41場で見ると、カント角と差しの相関は−0.44。「カントが急なバンクほど差しが決まらない」という関係に見えます。 ところが400mバンク31場に絞ると+0.10まで落ち、符号まで反転してしまう。 これはカント角そのものの効果ではなく、「カントが急なバンクは周長も短い」という関係を見ていただけだと考えるのが自然です。

対照的に、見なし直線は全41場で逃げと−0.75、400mに絞っても−0.59を保ちます。 周長という共通要因を取り除いても生き残るのは直線のほうでした。 予想の材料としてバンクの数字をひとつだけ覚えるなら、カント角より見なし直線を見るべき、というのが本コラムの結論です。

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41場の一覧

逃げ1着率の高い順に並べました。会場名から各場のコース別データページへ移動できます。

順位競輪場周長カント直線逃げ差し万車券
1前橋335m36.0°46.7m32.8%38.1%25.7%
2松戸333m29.7°38.2m32.7%37.1%28.6%
3奈良333m33.4°38.0m32.7%36.9%25.6%
4防府333m34.7°42.5m31.9%37.6%26.8%
5西武園400m29.4°47.6m29.8%44.2%27.2%
6伊東温泉333m34.7°46.6m28.2%40.3%25.7%
7別府400m33.7°59.9m27.8%42.7%26.8%
8福井400m31.5°52.8m27.7%45.3%26.4%
9富山333m33.7°43.0m27.4%39.9%26.8%
10佐世保400m31.5°40.2m26.2%46.7%26.3%
11小田原333m35.6°36.1m26.0%44.4%26.8%
12川崎400m32.2°58.0m25.8%46.8%28.8%
13小倉400m34.0°56.9m25.5%45.9%28.3%
14久留米400m31.5°50.7m25.5%43.1%27.0%
15取手400m31.5°54.8m25.5%47.0%27.7%
16函館400m30.6°51.3m25.3%47.5%28.0%
17大垣400m30.6°56.0m25.3%48.5%26.3%
18岸和田400m30.9°56.7m25.2%45.4%27.9%
19岐阜400m32.3°59.3m24.8%47.9%27.3%
20熊本400m34.3°60.3m24.7%46.0%26.7%
21高松400m33.3°54.8m24.6%45.9%27.0%
22立川400m31.2°58.0m24.3%51.3%31.4%
23平塚400m31.5°54.2m23.9%47.9%28.1%
24京王閣400m32.2°51.5m23.7%49.5%28.8%
25宇都宮500m25.8°63.3m23.4%52.4%28.3%
26玉野400m30.6°47.9m23.2%48.5%30.1%
27静岡400m30.7°56.4m23.1%48.3%27.5%
28名古屋400m34.0°58.8m23.0%48.5%29.7%
29豊橋400m33.8°60.3m22.9%50.2%28.1%
30松阪400m34.4°61.5m22.5%50.3%28.3%
31和歌山400m32.3°59.9m22.5%50.2%29.5%
32小松島400m29.8°55.5m22.3%49.0%28.6%
33松山400m34.0°58.6m22.2%47.0%26.6%
34青森400m32.3°58.9m21.9%52.1%28.8%
35四日市400m32.3°62.4m21.4%50.8%29.7%
36広島400m32.5°57.9m21.3%53.0%25.6%
37高知500m24.5°52.0m21.1%53.2%28.2%
38大宮500m26.3°66.7m20.9%56.7%31.7%
39いわき平400m32.9°62.7m20.8%54.7%30.8%
40武雄400m32.0°64.4m20.5%51.6%27.3%
41弥彦400m32.4°63.1m19.7%54.1%29.1%

逃げ1着率の高い順。上位5場(先行が残る)を橙、下位5場(差しが決まる)を緑で表示。

先行が残る側の上位は前橋・松戸・奈良・防府と、333m級が並びます (前橋だけは335mのドームバンク)。 逆に差しが決まる側は弥彦・武雄・いわき平・大宮・高知。 ここで面白いのは、弥彦・武雄・いわき平は500mではなく400mバンクだということです。 3場とも見なし直線が62m以上あり、500mバンクに匹敵する差し優勢の数字を出しています。 周長だけで判断すると読み違える典型例です。

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まとめ

  1. 周長が短いほど逃げ、長いほど差し。333m級の逃げ30.2%に対し500mは21.8%、差しは39.2%対54.1%。
  2. ただし周長・カント・直線は絡んでいる(周長とカントの相関−0.76)。生の比較では何が効いたか分からない。
  3. 周長を400mに固定しても、直線の効きは残る(逃げとの相関−0.59)。長い直線ほど差しが決まる。
  4. カント角の効果は、そろえた途端に消える(差しとの相関−0.44→+0.10)。周長との交絡を見ていた。
  5. 400mでも直線が長ければ差し優勢。弥彦・武雄・いわき平は直線62m超で500m並みの数字。

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バンクの形が分かったら、次は場ごとの中身。

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